発達障害の子どものしかり方①:「怒る」と「しかる」、自己肯定感


 

子どもをしかるって意外と難しいですよね。
自分が感情的になってしまったり、言うことを聞かなかったり。
特に発達障害の子どもをしかるときには、その障害特性から
しないほうが良いことや、効果的な方法があります。

今日は、発達障害のこどものしかり方について解説していきます!


「怒る」と「しかる」の違い:『つい怒ってしまう』前に

発達障害を持つ子どもの親御さんや担当する先生の話を聞くと、
思いがけない行動をしたり、何度注意してもやめなかったりするので、
つい怒ってしまい疲れる、育てににくさ・教えにくさを感じる、
という声を耳にすることがあります。

執筆者のたまこはオープン・クローズド(障害をあかす・あかさない)で
それぞれひとつずつお仕事をしています。
オープンのお仕事は本のNPO、クローズドのお仕事は幼稚園の年少から小
学校二年生の園児・児童を対象とした習い事です。
子どもは大切なお客様ですが、学びの一環としてしかることが
必要な場面がしばしばあります。
しかることが必要なのは、定型発達の(発達障害を持たない)子どもも
発達障害をもつ子どもも同じです。

ちなみに、『怒る』『しかる』の違いを知っていますか?
怒る、というのは起こった出来事に対し、
腹が立ったという感情をぶつけるだけの行為です。
一方、しかる、というのはなされた行動に対し、何がいけないのか、
どうすればよかったのか、良い行動に導くために注意・助言をする行為です。

以前講演会の際に、少し発達障害の子どものしかり方について触れました。
アドリブで急に聞かれた問いへの答えだったので、
一度ちゃんと記事にしておきたいなと思っていました。
この機会に記事にまとめてみましたので怒ってしまう前にぜひご一読ください。

↓執筆者たまこの講演会のお話し↓
発達障害:講演会のご報告 発達障害の子どもの接し方、しかり方

 

発達障害の子ども:「怒る」のが良くない理由

定型発達の子どもに対してももちろんですが、
特に発達障害の子どもに対して怒るのが良くない理由があります。

発達障害の障害特性として、コミュニケーションの障害があります。
特に、ノンバーバル(非言語的な)コミュニケーションを不得手としています。
ノンバーバルなコミュニケーションが不得手な相手に
感情ばかりをぶつけても伝わりにくいのは当然です。
冷静に、穏やかに、わかりやすい言葉でしかるようにしてください。

特に自閉症スペクトラム障害の子どもにおいては、
認知機能の特性にも注意が必要です。
定型発達の子どもでも、『怒り』などの『怖い』体験は
記憶として残りやすいものです。
皆さんもPTSD(心的外傷後ストレス障害)については
見聞きしたことがあると思います。
このPTSDで起こるフラッシュバックは、自閉症スペクトラム障害の場合、
より鮮明で侵襲的である場合が多く、場合によってはパニックにもつながります。
怒りの意味が伝わらず良い行動変容が見られないばかりか、
子どもの心に大きな傷を残すことにもなるのです。

 

自己肯定感:怒るよりしかって育てる

最近自己肯定感という言葉をよく聞きます。
しかる過程と自己肯定感は大きく関連しています。
自己肯定感とは、自分自身のの存在、生きる価値を肯定できる感情のことを指します。似た言葉でいえば、自尊心、自己効力感にあたります。
自分を信じる心はこの自己肯定感の上に成り立ちます。
人は自分を信じることで次への一段に歩を進めることができ、
一段一段成功を積み重ねることで成長していきます。
つまり、自己肯定感はこどもの成長、自立にとって欠かせないものなのです。

しかし、発達障害の子どもは自己肯定感が育ちにくい環境にあります。
前回お話ししたように、親や教員などの周りの大人に怒られることが多いほか、
幼稚園や学校で周囲の子どもより『うまくできない』という劣等感を抱いたり、
失敗体験をしたりすることが多いからです。
前回『怒る』と『しかる』の違いを説明しましたが、
怒って感情をぶつけることは、自己肯定感が育つのをさまたげることです。
一方、しかるときには行動の改善が望まれ、褒める機会が生まれます。
褒められるというのは人に受け容れられる体験であり成功体験ですから、
行動を強化する(より良い行動をするようになる、身につける)だけでなく、
自己肯定感を育てることにもつながるのです。

褒められるというのは人に受け容れられる経験ですが、
感情を受け容れられるというのも同様です。
発達障害のこどもは予想もつかない反応をすることがしばしばありますが、
本人にとってはそれは自然な反応なのです。
感情や人格を否定されることは自己肯定感が育つのを妨げます。
頭ごなしに怒ったり止めたりせず、
まずはその時のその感情を受け容れてあげてください。

発達障害の子どもは目が合わせづらいという障害特性があります。
目を合わせて話さないと感情が通い合った感じがしないと思うかもしれませんが、
『~って思ったんだね』、『~したかったんだね』と
声をかけてあげるだけでも大丈夫です。
頭ごなしに怒って恐怖を植え付けたり、
反抗心を生んで意固地にさせたり、ということも減るはずです。

ここまででいつもの長さを超えてしまいました。
↓続きは「発達障害のこどものしかり方②」をご覧ください。↓
発達障害の子どものしかり方②:自己肯定感・体罰

ではまた。

 

関連記事

発達障害:講演会のご報告 発達障害の子どもの接し方、しかり方

発達障害の子どものしかり方②:自己肯定感・体罰


 

コメント

  1. もごもごです。 より:

    一連の記事、とても分かりやすいです。だんだん理解できてきているなと感じています。

    • たまこ より:

      ありがとうございます!②に続く予定ですのでよろしければ続けてお読みください。

タイトルとURLをコピーしました