学校や職場では障害者に対し『合理的配慮』を
することが義務付けられましたね。
そうはいっても具体的にどんなことに困って、
どう配慮して欲しいのかわからないという
現場も多いのではないでしょうか?
今日は発達障害者がどんなことに困って、
どう対応して欲しいと考えていたのか、
『幼年期』『学童期』に焦点をあてて
実例を紹介していきたいと思います!
発達障害児の困難と希望する対応とは?
発達障害を持つ子どもは、
障害特性から生活上様々な困難を持ち、
それにより活動に制限を受けたり
ストレスのため二次障害を抱えたりします。
そのようなことがないように
『合理的配慮』が義務付けられています。
とはいえ、具体的にどのような対応を
すればいいのかはイメージしにくいもの。
ADHD・ASDを持つ執筆者たまこの実例、
具体的エピソードについて紹介して
いきますので、ぜひ参考にしてください。
エピソードは以下のような内容で
紹介していきます。
- 背景となる障害特性、特徴
- 具体的な行動や困難
- 周囲の反応
- して欲しかった対応
では、ごゆっくりどうぞ。
障害特性:片付け・時間管理が苦手
『片付けられない』、『時間が守れない』ことは
今ではADHDの代名詞のように語られますが、
これらは学童期からすでに見られる特徴です。
具体的エピソード
- 自宅の身の回りのものがいつも
整っていない - 支度がいつもぎりぎり
- ラジオ体操に遅れる
- 指摘されなくても自覚があり、
本人も直したいと困っているが
原因も方法もわからない - 自尊心はひどく傷ついている
- 先の見通しをつけること、優先順位を
つけることが難しい、注意がそれやすい
などの特性、原因には気づいていない
父母の反応
- だらしない、やる気がない、女の子なのに
平気でいるのが恥ずかしいと蔑視する - 『片付けなさい』、『早くしなさい』と
頭ごなしに怒る
して欲しかった対応
- 本人も直したい、恥ずかしいと思っており、
できていない事実をつきつけても
自尊心が傷つくだけと気づいて欲しかった - できて当たり前と思わず、やり方・進め方や
優先順位を具体的に教えて欲しかった
障害特性:興味の偏り
興味の偏りはASDでよく見られる特徴で、
ほかのひとと違うものに興味を持ったり、
ひとつのものに熱中しのめりこむように
なったりします。
具体的エピソード
- 人よりも活動そのものに興味がわく
- 選択活動では、友人が集まる
『お花屋さん』ではなく父親の
仕事(建築業)に近く関心を持った
『大工さん』を選びひとりで作業する
教員・同級生の反応
- けげんな目で見る
- 女性らしいもの、皆が選択するものに
修正させる - 本人が選択した理由は聞かない
- 選択を修正させる理由は説明しない
して欲しかった対応
- (障害だけの問題ではないが)
多様性を認めて欲しかった
障害特性:こだわりが強い
こだわりの強さはASDでよく見られる
特徴で、急な変更・変化に弱く、
ときにパニックに陥ることもあります。
具体的エピソード
- ルールは絶対:一台も車が来る気配がなく、
友人たちが行ってしまっても、赤信号で
横断歩道は渡らない - ルールは絶対:学校で一人でバスに
乗ってはいけないと言われたら、親に
一人でバスで出かけるように言われても
出かけず、困惑して泣く - 自分ルールも絶対:登校時から雨でも
傘は折り畳み(下校時やんだら畳んで
帰れるから)
同級生の反応
- 奇異に思い気味悪がる、良い子ぶると言って
はやしたてる - (長傘を持っていないので)貧乏と
はやしたてる
母・姉の反応
- 弱虫・わがままとなじる
して欲しかった対応
- 個性として理解して欲しかった
- 本人の困惑を受け止め、合理的な判断が
できるよう促して欲しかった - 困惑が起きないようルールを学校と
家庭で統一して欲しかった
障害特性:不注意1
ADHDで見られる特徴といえば、
多動性・衝動性・不注意の3つ。
不注意は様々な困難の原因となりがちです。
具体的エピソード
- 学習机では棚に置いてあるものなどに
目が行き、取り組んでいる課題以外の
ものに注意がそれやすい
父の反応
- やる気が足りない、怠けていると叱る
- 怒って学習机を捨ててしまう
母の対応
- 仕方なく折り畳みのテーブル(座卓)を
使い、その都度畳んでしまわせる
してほしかった対応
- やる気の問題ではなく、刺激を遮ると良い
ことに気づいて欲しかった(実際に座卓では
集中して取り組むことができた)
障害特性:不注意2
具体的エピソード
- 不注意に加えボディーイメージ(車で言う
車体感覚)が悪く、あちこち身体をぶつけた - 捻挫をよく繰り返した
同級生の反応
- 『シミ(あざのこと)』と呼ばれ汚いと
はやしてた - 軽い捻挫で腫れが少ないとわざとだとか
仮病だとかはやしたてた - 運動神経が悪いと馬鹿にした
教員の反応
- 見ていてもなにも反応しなかった
して欲しかった対応
- 余計な介入をしてもいじめを助長する
と思ったのかもしれないが(教員も
仮病と思っていたのかもしれないが)、
教員には味方をして欲しかった
障害特性:忘れ物をしやすい
忘れ物・失くし物が多いのもADHDの特徴。
これも不注意がその主な原因です。
具体的エピソード
- 忘れ物をしやすいので、防止のため
不要なものもふくめいつも荷物を
たくさん持ち歩いている - 忘れ物をしないことにこだわりが
強くなり、忘れ物をするとひどく
ショックを受ける
教員の反応
- クラスで忘れ物が一番少ないと
褒める
母・姉の反応
- みっともない、気持ちがわるいと言う
して欲しかった対応
- 教員と家族の意見は一致して欲しかった
- 本人はミス(忘れ物)を前提に対応した
つもりであり、まず努力を認めて
欲しかった - 他にどうやれば良いのか教えて
欲しかった
障害特性:運動が苦手
知的障害や運動の障害がASDやADHD、
LDに重複することがあります。
これをDCD(発達性協調運動症)といいます。
具体的エピソード
- 球技などの物を扱うスポーツ、チーム
プレーなどの協調を要する物は苦手だった - 動きを目で見て模倣するのが苦手だった
- 身体が固く動きがぎこちなかった
- もともと動くことは好きだったが、
周囲の反応から自尊心が傷つき、
次第に動くことが嫌いになっていった
同級生の反応
- 嘲笑の対象となった
- 同じチームになるのを嫌がった
- 体育の授業を体調不良や生理で休むと、
ずる休みと言ってはやしたてた
教員の反応
- まじめにやっていないと言い、皆の前で
一人基礎動作を繰り返しやらせた
して欲しかった対応
- ダメなところばかり注目せず、
できるところやできないなりの頑張り、
成長に注目して欲しかった - うまくできないのであってわざと
下手にしているのではないことを
理解し、怒らないで欲しかった - 見本を見せるだけでなく何をどうすれば
よいのか一つ一つの動作を説明して
理解させてほしかった
話し方の特徴
具体的特徴
- 大人びた話し方や言葉選び
- やたらと難しい言葉を使う
- 余計な事(言わなくても良い事実、
失言)を言ったり、まだ話す
タイミングでないのに話し出したり
してしまう(衝動性) - 話し始めると長い
同級生の反応
- けむたがる
- 嘲笑する
教員の反応
- けむたがる
- 余計なことを言うので友人をなくす、
しつけが悪いと父母に言う
して欲しかった対応
- 親にしつけの是正を言うより、本人に
具体的にいけないことと対処を指導
して欲しかった
聴き方の特徴
具体的特徴
- 『熊』などNHKと一般の発音の
違いや友人の言葉の訛りが
受け容れられない(こだわり) - 人の話の特定の単語に反応して
主題と異なる話を始めてしまう - 教員の板書の誤りや同級生の
言葉の誤りをいちいち指摘する - あいまいな表現や具体的でない指定
には困惑するか拡大解釈してしまう - 周囲の音に反応して話に集中
できない(聴覚過敏)
同級生の反応
- 多数決を採って正しさを決めようと
する - 嘲笑する
- 関係ない(話)、と怒る
教員の反応
- 話を聞いていないと叱る
- けむたがる
- 困惑する
- 周囲に合わせるように言う
して欲しかった対応
- 多数が正解というのではなく、
場面ごとに正解があることを
認めて欲しかった - 何を主題に話しているのか
はじめに提示して欲しかった - イメージを限定させたいなら
具体的な表現に、そうでないなら
多様性、イメージの広がりを
認めて欲しかった
発達障害児の困難と希望する対応とは?まとめ
幼年期、学童期に実際に起こった困難と、
して欲しかった対応について書いてみました。
合理的配慮の過程は、障害特性や
特徴を知り、それらによる困難が
起きないようにすることです。
今回の具体例から導き出される配慮には
以下のようなものがあります。
- 多様性(個性)や努力を認める
- 怒るのではなく具体的なやり方を
指導する - 学校と家庭でルールは統一する
- しつけのせいや本人のやる気のせい
ではないと理解する - 余計な視覚的聴覚的刺激は避ける
- 説明は具体的にする
これらは単なるわがままではなく、
定型発達の子どもにも優しい配慮です。
発達障害児が、できていないことの原因や
良いやり方に自身で気づくのは難しいことです。
困難を抱え二次障害を発症する前に、
ぜひ配慮を取り入れてください。
コメント
今回もふーん、ふーーん、と思いながら拝読しました。
項ごとに「ん?」という画像が入っていて、手が込んでいますね。