『逃げるは恥だが役に立つ』といえば、新垣結衣、星野源主演で
2016年に社会現象と言われるまで大ヒットしたテレビシリーズ。
今年2021年に続編が放送され、好評を得ました。
ご覧になった方、そして、もしかして…と思った方も多いと思います。
今日はこのドラマと発達障害の関係について解説していきます!
『逃げるは恥だが役に立つ』はご覧になりましたか?
略して『逃げ恥』と呼ばれ大ヒットしたこの作品、
2016年のテレビシリーズのあらすじについて簡潔に説明します。
新垣結衣演じる森山みくりは派遣切りにあい無職に。
父の紹介で『独身のプロ』と言うほど独身をこじらせた
星野源演じる津崎平匡のマンションで家事代行サービスをすることに。
『就職としての結婚』にメリットを感じた二人は、
事実婚という形で内密に『契約結婚』をします。
周囲の目をごまかすために、少しずつ距離を縮めていく二人ですが、
これがなかなかうまく進んでいかない。
この様子を見た視聴者が『ムズキュン』すると言って
ちょっとした流行語にもなりました。
平匡さんはアスペルガー?
アスペルガー症候群がどんなものかピンとこない人は、
このドラマの『津崎平匡』を想像するとわかりやすいのではと思います。
執筆者たまこは医師でないので勝手な診断はできないのですが、
とても近い特徴をたくさん持っています。
- 高学歴で優秀なSEである(知的障害や言語障害はない)
- 空気が読めず余計なことを言う(対人関係・コミュニケーションの困難)
- 寝食忘れて仕事に打ち込み体調を崩す(過集中)
- ささいなことに対してこだわる(行動・興味の限定やこだわり)
- 相手の気持ち・感情を理解・共有できない(共感性の低さ)
ぱっと思いついただけでもこのような特徴が合致します。
ASD:自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群を含む)を説明するときに
よく語られるのが、『共感性の低さ』。
平匡とヒロインみくりのすれちがいも、
平匡の共感性の低さが要因であるものが多かったと思います。
このすれちがいと平匡の奥手なところが、
じれったくてむずむずさせる『ムズキュン』を生んだわけですね。
(ちなみにASDは『共感性がない』わけではありません。
脳科学の世界では、ASD同士の実験でいとも簡単に
共感的な反応を示す結果が発表されています!
もとの論文を忘れたのでカッコ書きにしておきます)
みくりはカサンドラ症候群予備軍?
しかし、みくりのあの『ひとりずもう感』を見ていると、
現実には大変だなあと思ってしまいます。
これまで彼女ナシという設定こそ現実的です。
だからこそ通じあえたときはキュンとするわけですが、
それだけじゃあまりにもしんどい。
じゃあどうして見ていたくなるのか。
つまずいたところ、大事なところは平匡なりに向き合って考え、
伝えようとしてくれる。そういう平匡の真剣さ、
ピュアさがベースにあるから見ていたくなるんでしょうね。
カサンドラ症候群という言葉を耳にしたことはありますか?
アスペルガー症候群の配偶者やパートナーと情緒的な
コミュニケーションが行われず、相互関係が築けないために
もう一方の配偶者やパートナーに生じる、
身体的あるいは精神的症状のことを言います。
思ったような反応が得られず、
独りずもうを繰り返しているみくりを見ていると、
いつかカサンドラ症候群になるのでは、心配してしまいます。
しかし、観ていた方でもすっかりお忘れかと思いますが、
みくりは大学院を出て臨床心理士の資格を取っています。
はっきりと平匡の障害特性に触れられる場面はありませんが、
障害のなせるわざ、というところは受け容れて、
やはり真剣さやピュアさという個性に惹かれ支えられているのでしょう。
カサンドラ症候群については、また別の機会にお話しできたらと思います。
アスペルガー障害の診断基準
アスペルガー症候群の定義・診断基準の詳細についても、
また別の機会に解説できたらと思います。
今回はアメリカ精神医学会出版の、
日本の臨床でも採用されている精神疾患の診断基準・診断分類
『DSM; Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 』の第5版、
DSM-5を紹介します。
*DSM-5ではアスペルガー症候群はASDに含まれており、
ここではASDの診断基準を抜粋します。
DSM-5 におけるASD の診断基準
- 社会でのコミュニケーションや対人交流の持続的な障害
- 社会での情緒的な相互交流の障害
- 社会的交流における非言語コミュニケーション行動の障害
- 人間関係を築いて保ち理解することの障害
- 限られた反復されるパターンの行動や興味、活動(以下の項目のうち少なくとも2つに当てはまる)
- 型にはまった体の動き、物の使用や発話
- 同一性へのこだわり、決まった手順への融通の利かない固執、儀式化された言語もしくは非言語行動パターン
- 集中の深さや狭さが一般的でないほど非常に限られている大変強い興味・関心
- 感覚入力に対しての反応性の過度の上昇もしくは低下、もしくは周囲の環境の感覚的側面に対しての並外れた興味
- 症状は早期の発達段階までに発現していなければならない(が、社会的な要求が限られた能力を超えるまで全てが現れないかもしれない。
もしくは後天的に学んだ対処法で見えなくなっているかもしれない。) - 症状によって社会や職業またはその他の重要な分野で臨床的に重大な機能障害が起こっている
発達障害:アスペルガー症候群と『逃げるは恥だが役に立つ』 まとめ
- ドラマ『逃げ恥』の平匡さんはアスペルガー症候群に
とても近い特徴をたくさん持っている - アスペルガー症候群のパートナーと、
コミュニケーション障害により相互関係が築けないために生じる、
身体的あるいは精神的症状のことをカサンドラ症候群という - 診断基準DSM-5では、アスペルガー症候群は
ASD(自閉症スペクトラム障害)に含まれる
と、いうことでいろいろ深読みしてみるのもドラマの楽しみ方ですが、
まじめでピュアという平匡さんのキャラクターは、
それだけで観るものをキュンとさせ、楽しませてくれるものだった、
というのがたまこの感想です。ガッキーかわええ~!
ではまた。
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